日本音声学会に興味をおもちの皆様へ


日本音声学会第15代会長
前川 喜久雄 (Kikuo MAEKAWA)

音声学会とは

本学会に興味をおもちの皆様に学会の特徴と活動内容をご紹介いたします。日本音声学会は1926年(大正15年)に音聲學協会として創立されました。初代会長は上田萬年博士でした。本学会は、言語研究を目的とする学会としては、我が国で最初に設立された組織であり、7年後には創立百周年を迎えます。創立以来、音声の研究に興味をもつ会員に交流と成果発表の機会を提供しつづけて今日にいたっています。

現在は年1回の全国大会と年2回の研究例会を開催し、さらに、各種講習会、講演会を開催しています。学会誌『音声研究』には、和文ないし英文の論文が年間200~300頁掲載されています。これらの論文は、科学技術振興機構の運営するJ-STAGEで一般公開されており、会員非会員を問わず、どなたでも閲覧が可能です。

本学会の会員は、研究成果を『音声研究』へ投稿できるほか、全国大会・研究例会で研究発表ができ、また全国大会をはじめとする各種イベントに割引レートで参加することができます。

現在、本学会には750名ほどの個人会員がおり、そのうち90名前後が学生会員です。会員になるための特別の資格はありません。音声に興味を持つ方ならば、所定の会費と入会金を納めることで、どなたでも入会していただくことができます。会員による推薦なども不要です。

学会の運営は学生会員を除く学会員の選挙によって選ばれる50名の評議員と、評議員の互選で選ばれる9名の理事、そして理事の互選で推挙される会長によって行われています。女性会員の割合は評議員が13/50名、理事が4/9名です。

音声学とは

本学会の会則には目的として「諸言語の音声に関する研究を促進」することが挙げられています。ここでイメージされているのは、日本語、英語、中国語といった諸言語やその方言にどのような子音や母音があり、またアクセントやイントネーションの体系はどうなっているかといった問題の研究です。

これは19世紀に近代的な音声学が始まって以来の一貫した研究目標であり、また、そのような研究を行うことによって外国語音声の教授法に貢献することも、音声学の永年の目標でありつづけています。

こうした伝統的な研究にくわえて、現在の音声研究では、もっと間口の広い研究が行われるようになっています。最近本学会で発表された研究をみると、音声の音響的特徴の研究(いわゆる音響音声学)、音響的特徴の分析に立脚した音声知覚の研究、外国語音声習得の過程を客観的な手法で解明しようとするL2研究、乳幼児の音声言語獲得過程の研究、進行中の音声変化に関する社会言語学的研究、音声情報処理での応用を念頭においた音声言語資源の開発、音声合成技術を応用した音声障害者支援システムの開発、生理学的な観測手段による音声生成研究、音声生成知覚過程の脳科学的研究などの成果が報告されています。

当然、発表者の背景も、言語学・音声学・外国語学などの伝統的領域にとどまらず、心理学・医学・工学・情報処理などの領域におよんでいます。音声という切り口を共有することで、様々な背景をもつ研究者が交流できることが本学会の特色のひとつだと言えるでしょう。

今後の音声学会・今後の音声学

日本音声学会は数多の先達の努力に支えられて、百年になんなんとする活動を続けてきました。今後も学会の活力を維持し、存在意義を明らかにしつづけなければなりません。そのためには、現在以上に実社会との接点をもとめる努力が必要になるでしょう。例えば、小学校における英語教育の義務化などは、本学会の活動と直接的・間接的に関係する社会問題です。先人達の築き上げてきた音声研究の高い水準を維持しつつ、一方で、こうした問題の解決にも貢献できる学会となるために努力したいと思います。